BAROQUE「PUER ET PUELLA」のこと

8月6日、大阪ZEAL LINKも閉店し、ZEAL LINKという屋号が姿を消しました。
ヴィジュアル系のバンド、いいバンドは今もいますし、新人バンドも出てきています。が、なかなか「元々ヴィジュアル系好き」なコミュニティの外に出ていけるようなバンドがいない、というか、外に発信できるメディアが既にほとんど失われてしまい、全体としてのパイはどんどん小さくなるばかり。そして専門のCD店も閉店を余儀なくされると。

そんな中でもきちんと前向きなバンドは、音楽としても非常に前向きな作品を出し続けています。
そして、今回のBAROQUEのニューアルバムが、他のジャンル込々で考えても相当に出色の、傑作と呼んでいいレベルの作品出してきました。
2001年に活動開始したけっこうなベテラン、ダークでゴシックな世界観で出てくるバンドが多い中、カジュアルな衣装と薄いメイクで「オサレ系」と称されるバンド群の元祖的存在となったバンドですが、2004年に一度解散。4人が2人ずつ分裂する形でkannivalismとboogiemanという2つのバンドで活動していましたが、2011年に再始動。が、元boogiemanの方のメンバーが次々脱退し、結局は元kannivalismの2人がBAROQUE名義で活動を継続しています。

デビュー当時は見た目の方でいろいろ言われていましたが、音楽の方ではミクスチャー的な匂いをさせつつそこここに他の洋楽的なテイストをぶっ込んでいくスタイルで、個人的にはそこそこ面白いなあという程度だったのですが、それくらいだったのでその後ほとんど追っていなかったのですが、2015年の前作「PLANETARY SECRET」がやたらいいという話を耳にして聴いてみたら、シューゲイザーとポストロックを掛け合わせたようなトラックの合間をV系らしい情緒的なメロディーが流れる、いろいろな意志を感じるアルバムでして。

そこから4年経ってのニューアルバム「PUER ET PUELLA」。もう前作のシューゲイザーとかポストロック的な面もところどころあるっちゃあるのですが、もっと消化が進んで何か特定の音楽ジャンルでざっくり例えるのも難しくなってきて、でもあからさまに音楽としての完成度は高く、かつヴィジュアル系というカテゴリに身を置くことの矜持というか、元々の部分もきっちり残している。
音楽的なチャレンジはそこここにありつつ、全体としてすごくバランスがいいという、実はなかなかできんことをできている。

本当にすごくいいアルバムなので、何とかして「『元々ヴィジュアル系好き』なコミュニティの外に出ていける」ようになればいいなと思うのですが、ことプロモーションの方針とか価格とかを見るに、あんまりそのつもりもないようで、正直すごく残念。つうか高えよ。