ニガミ17才×DATSの対バン@リキッドルームの話

昨日はリキッドルーム恵比寿15周年企画のニガミ17才×DATSの対バン。

先攻ニガミ17才。
そもそもYouTubeで「おいしい水」のMV見て、これどう聴いてもライブが音源以上になるヤツじゃないかと思っていて、一度は生で観ないとあかんと思っていたので来たわけですが、まさにそんな感じでした。原則がっつりプレイヤビリティの高さを前提にした楽曲なんだけど、でもやっぱり平沢が存在としてものすごいアクセントになっていて、結果何とも言えない独特の空気感がステージから放たれる。

フロントの岩下が以前やっていた嘘つきバービーは、楽曲はヘンテコでも演奏はひたすらストイックだったイメージなのですが、ニガミ17才の平沢のシンセの上物の音色はやっぱりポップな方向に全体の空気を引っ張っていくし、ステージ上では無闇にうろうろしたりとか、弦2人がドラムの周りに集まってパッキパキの演奏している中に用もないのにその輪の中に手ぶらで入って行ったりとか、キャラとしてもストイックとは真逆の方向に持っていく。
平沢本人は「岩下の『地下』的な感性を地上に繋げる役割」を自認している旨、インタビューでも語っているわけですが、制作上だけでなくステージでも間違いなくそういう役割を担っていて。
結果、存在として恐ろしくユニーク。かつ何ぼでもこの先転がっていけそうな懐の深さもあるし、もう少し継続して観察していきたいバンド。

で、後攻がDATSだったわけですが、正味この順番はあかん。
DATSは音もステージも現在進行形でひたすらストイックで、でもセッション的な緊張感でもって引っ張っていくタイプでもないので、もうバンド的な位置付けがまるで違う。
そういう場合、ニガミ17才のニガミ17才的なところを好きな人は、DATSを同じテンションで観られないんですよ。逆ならDATSのファンも「何かおもしろいもの」として観てもらえるのですが。
結果、これまでいくつも対バン観てきた中で1-2を争うレベルで「後攻演奏中の途中で退場する観客」の数の多さでした。
DATSはDATSで悪くないし、アガる曲なんかはUnderworldとマンチェスターの合体みたいでかなり好きなんですけど、相当な割合がそこまで持たなかった。

でも考えてみれば、ライブハウス叩き上げのバンドが上に行こうとする場合、なかなかストイックな演奏だけでは難しいのは事実なわけで。
SHISHAMOのように既存のメディアの露出に乗ったパターンを除けば、レキシやヤバTや打首獄門同好会あたりの、「おもろい」曲とライブを続けて企画ライブやフェスでひたすら見つかり続けての今みたいなバンドがいる一方、バンドのクオリティを上げたうえでその上にポップなイメージや雫のキャラ演出を見定めて行った結果、頭一つ抜けた感のあるポルカドットスティングレイみたいな事例もあったり、先日2枚組でアルバムを出したサカナクションなんかは、ひたすら売れるための「作為」を身に付けていっての今だったり。

バンドの音楽的本質以外のオプションがあってようやく売れるというのはもう世の定め的なものであり、ニガミ17才は結果としてではあるものの、平沢あくびという高性能なオプションを身に付けて、これから上を目指そうというわけです。深夜帯ではあるものの平沢単体で地上波のバラエティにまで出てますからそりゃ本気ですよ。

ただ、テレビに出たり単体で知名度上げたからといって、それがただちに母体に還元されるわけではないということは、川島海荷がいた9nineとか篠崎愛がいたAeLL.といったアイドルグループがどうにもドンと売れないままどうかなっちゃったことからもある程度明白であり、やっぱりニガミ17才もバンドを一生懸命やってください。また観に行きます。