スマホやPCに著作権料を課金させろとか言ってること

昔、ブログじゃなくて個人サイトだった頃には、CCCDとかのことで怒ってた時期もありましたが、最近は歳も取ったこともあって随分落ち着いて、ブログだけでなく普段の生活でもほぼ怒ることなく生活できています。本当です。

そんなところにやってきたこんな記事。

スマホやPC本体に「著作権料上乗せを」国際組織が決議

この決議の大元になっている「私的録音録画補償金制度」は、デジタル記録媒体が世に出るようになって1992年に定められたもので、要するに「デジタルになったら元音源と全く同じ音質でコピーできるんだから、コピーした分幾らか寄こせよ」という制度なわけですが、CD-Rなんか音楽ではない他のデータの記録にも普通に使うものであり、そんなん課金するの無茶だろうと思っていたら、本当に「音楽用CD-R」という名前のブツが普通のCD-Rよりちょっと高い値段で世に出てきて鼻で笑った記憶があります。聖人君子以外で誰が買うの状態です。

結局世の中的に、その制度の下でまともに機能していた媒体はDATテープとMD、DVD系の一部とBlu-ray系の盤だけじゃないかと思うのですが、確か2013年にも著作権団体の連合団体が「PCやレコーダーにも課金させろ」と言い出して、でもあっという間に一蹴されていました。
なのに今度は「世界」という看板で、現在主流になっているスマホも込みにして、一蹴されたそれをもう1回出してきたわけです。笑っちゃいますね。

普通に考えてみる。

まず、MDはほぼ間違いなく音楽をコピーするためのものですが、PCやスマホは必ずしも音楽のために買うものではないので、これで音楽聴かない人からまで課金するのは明らかに行き過ぎ。つまりCD-Rのように音楽用の料金を乗せたものとそうでない用をきちんと分けて用意していただいた後でなければ、この決議は世の中に通らない。
もちろん、CD-R等の媒体とは異なってソフトウェア的な制限でもってそれらをきちんと分けることはできると思いますので、そこ一生懸命頑張っていただいて。でも、たとえば自作楽曲の制作用にPC使う場合、楽曲は少なくともその段階では著作権団体の管理下には置かれていないので、それは課金されてないPCでも使えなくちゃいけません。
ということは、管理楽曲の録音データに何かIDを入れておいて、それをネット経由で団体のDBに照合しに行くような形であれば実現可能でしょう。死ぬほど使い勝手悪そうですが。

そして、PCやスマホの記憶媒体に課金するということであれば、世の中の全てのDRMは解除していただく必要があります。DRMはそもそも「コピーはしてはいけないことだから制限する」という体で導入されているものであり、今回PCやスマホからお金を取るということは「コピーが行えることが前提」の思想です。この双方は同時に両立しえません。さあ、すべての制限を外しましょう。話はそれからだ。

で、万が一これだけ全部やったとしても恐らく音楽の総売上は上がりません。
今回団体が望んでいる制度は「私的録音」への課金ですが、今の世の中「私的録音」して音楽を聴いている人間がどれだけいるんだという話。俺か。
もしPCに課金されるようなことがあれば、そんなPC買わんと音楽全部ストリーミングで聴くことにしますわ。サブスクリプションで支払っている月額の中に既に著作権料は入ってますので、そっちでよろしくという感じで。
そういう考えの方は少なくないと思いますので、他国と比較して恐ろしいくらいCD/DVD等のパッケージが生き残っているこの国ですが、この制度を正式導入すればパッケージはこれまで以上のスピードで衰退し、一番利益率の高い商品形態をすごい勢いで失うことになります。

本当に、CDが衰退し始めてからのJASRACとかRIAJの考えることは悉く「10年後の1000円をガン無視して渾身の力で目の前の10円を拾いにいく」感じで、経済的にも思想的にもわかりやすく先に窮していることがわかって楽しいのですが、今回のはちょっと笑えない。せめてもう少しおもしろくしてほしい。