この春の「失敗フェス」のこと

この週末、スペシャ主催のLIVEHOLIC EXTRA、TSUTAYAのツタロックという2つのフェスがほぼ並行して幕張で開催されていたのですが、どっちが勝ったとかではなく両方とも動員としては辛いことになっていたという報が入ってまいりました。

LIVEHOLIC EXTRA
ツタロック

それぞれ、かなり「強い」メンツは引っ張ってきてるとは思うんですよ。
ただ、強いバンドってそれなりに数は限られているので、どうしても集めるとなると集合体としては似た印象になりますし、似ているのであればゴールデンウイークにはこれまでの開催で実績のあるVIVA LA ROCKもJAPAN JAMもあるわけで、そりゃそっちの方に行きます。
で、それらの実績あるフェスですら現状即完でチケットが捌けるような状況でもなく、かなりのプロモーションを行ったうえで何とかそれなりの動員を上げているというところで。

現状この世で開催されているフェス。既に長い歴史と実績のあるもの、新しくはあるものの主催がミュージシャンと深い繋がりがあるが故に信頼性を持ちえたもの、そしてミュージシャン自身が主催となっているもの。
特に首都圏はそれらの「信頼ある」フェスだけでも相当な数になります。正直既に「供給過多」レベルで。そこに何で「よさげなの集めました」程度の、何の信頼性のないのが入り込んできて大盛況にできると思ったのか。

そもそも「フェス属性」のある人間の数自体限られています。その属性がある人にも可処分所得の上限があります。という単純なことを今回このフェスをやろうと考えた人は気付いていなかったんかと思います。
私は衣食住の基本以外のほぼ全ての可処分所得を音楽にぶち込んでいますが、今回の2フェスのメンツ見て少しでも心動いたのは「さや姉生で観られるの悪くないなあ」くらいですし、そのために1万円近い金額と丸1日を供するほどお金持ちでもないし時間に余裕があるわけでもありません。5月にVIVA LA ROCKに行くので、そっちに何万円もかけるのに、似たようなメンツを3月に観ようとはさすがに思えない。
出演するバンドもメンツとしては屈強ではありますが差別化ポイントは見えず、「ああ、これならビバラでいいわ」と思うわけです。

で、出演するそれぞれ各バンドの大ファンの人もフェス全通するほどの人は相当に限られますし、大半はワンマンの方に物販含めて可処分所得をかけますし。
バンドの質とか運営のホスピタリティとかではなく、そもそもそれ以前の企画のところでいろいろクリアできていなかったということではないかなあと。

ただ、かつてLIVE STANDとかGO FES!とか第1回JAPAN JAM等に参加してきた身として言いたいのは、失敗フェスというのは観客にとっては相当に素晴らしい環境であるいうことです。
入場並ばない。ご飯やお酒買うの並ばない。トイレ並ばない。物販並ばない。座りたいときすぐに席が取れる。ギリギリにステージに行ってもいい位置で観られる。最高なんですよ。
なので、窮屈は嫌だ、でもフェスには行ってみたいという方は、これからもうっかり開催されるでありましょう実績無さげな新フェスに敢えてぶっ込んでみるのも手だと思います。
ただ、あんまりすぎて開演前に中止が決まって払い戻し超面倒、みたいなこともたまにありますので要注意だ。

<補足>
ツタロックは言うほど悲惨でもなかったという報が新たに。ただ、パンク・ラウド系目当ての人が多すぎて、それ以外のバンドがやや辛げだったという話も。
「どういう層の顧客を呼ぶか」というのはなかなかバランス難しいのですが、でも結局パンク・ラウド系は確実に動員見込めるのでそこ頼みになってしまうきらいはあり、そうなるとますます他の層にとっては「差別化できてない」ように見えてしまうという蛸壺感。