タワーレコード新宿店の変遷のこと

タワーレコードは1月に渋谷店を大幅リニューアルして「今音源が売れるジャンル」に大幅に寄せたフロア構成にし、3月16日には店舗ごとそのジャンルに寄せた錦糸町パルコ店をオープン、そして21日には新宿店をリニューアル。「リニューアル」と言ってリニューアルしたのは新宿店はこれが2度目、前回は2012年でした。
というわけで、1月に渋谷店でやったように、リニューアルごとのフロア構成を追ってみます。

-2012

10階 SOUNDTRACK, MOVIE DVD, ANIME, MAGAZINE, BOOK
9階 JAZZ, BLUES, COUNTRY, WORLD, CLASSICAL, NEW AGE
8階 POP/ROCK, SOUL/R&B, HIPHOP, REGGAE, CLUB
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, J-POP

2012

10階 CLASSICAL, CLASSIC DVD
9階 POP/ROCK, SOUL/HIPHOP, CLUB,JAZZ, WORLD, BLUES/COUNTRY
8階 J-POP, K-POP, MOVIE DVD, SOUNDTRACK
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, アイドル, アニメ,ヴィジュアル, MAGAZINE, BOOK

2014(マイナーチェンジ)

10階 CLASSICAL,CLASSIC DVD
9階 POP/ROCK, SOUL/HIPHOP, CLUB, JAZZ, WORLD, BLUES/COUNTRY, 映画
8階 J-POP,アイドル,K-POP
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, ジャニーズ, アニメ, ヴィジュアル, MAGAZINE,BOOK

2019

10階 TOWER VINYL
9階 POP/ROCK, SOUL, HIPHOP, JAZZ, WORLD, BLUES/COUNTRY, CLASSICAL, NEW AGE, 映画
8階 J-POP,アイドル,K-POP
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, ジャニーズ, アニメ, ヴィジュアル, MAGAZINE, BOOK

渋谷店の1月のリニューアルの一番エグかったところは、床面積の半分以上を完全にイベントスペース化するという恐ろしい割り切りの5階の存在。在庫管理等のコストを考えれば、もう売れないジャンルを細かく揃えて並べておくより、イベントで「売れるジャンル」の数を捌きまくれれば、イベントないときはもう空き地にしておいた方がなんぼかマシである、という現実を見せつけてくれました。

そして今回の新宿店は10階ワンフロアを完全にアナログ盤専用のショップ・イン・ショップにしてしまうという渋谷とは別方向の、でもやはり「売れるジャンル」への割り切り。
その分潤沢な品揃えだったクラシック売り場を9階に移動、広い意味での「洋楽新譜」を完全に全部9階の1フロアに押し込みました。
2012年のリニューアル以前まで遡れば全フロア何らかの形で「洋楽新譜」が含まれていたのに比べると、もう大変な状況です。

でももう既に新譜が速攻サブスクで聴ける状況が当たり前の洋楽、そもそもパッケージを普通に世にリリースするミュージシャンが減りつつありますし、かつリリースしてもものごっつ世に出る数が限られているために日本にまで届かないものもあったりします。
そして届いたとしても、相当に海外からの入荷の量や回数も絞られるようになったのか、リリース日に店頭に並ぶのは相当に限られた有名ミュージシャンまたはタワーとして推したいミュージシャンくらいで、そこに入らなかった人の新譜は、リリースから2週間後にようやく棚に並んでるのを発見した、なんてこともあったりして。
要するに洋楽は売れないだけでなく、配給するにあたっての環境もすごい勢いで悪くなっているため如何ともし難いわけです。

4フロアざっと眺めてみたのですが、特に以前と比べて縮小著しいと感じたのは、テクノやハウス等の非ブラック系クラブ・ミュージック。でもそこらへんは確かにデータかアナログかになり、今一番CDリリースされていないジャンルだと思いますので、納得せざるを得ないのでして。

というわけで、10階のTOWER VINYL。

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悪くないです。新譜としてリリースされるアナログは相当に網羅し、中古盤も潤沢ですし価格的にもHMV record shopよりは割安感もあります。
まあ高い奴はアホみたいに高くて、Guns n'Rosesの1stのオリジナルレイプジャケが60,000円とか笑っちゃう値付けのもありますが、今はそういうレア盤はどこも似たような感じではありますから。

そしてもう一点特筆すべきは、店内のこんな地図。

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少なくとも表向きは新宿の他レコード店と喧嘩するつもりはなく、仲良くアナログ文化を発展させていきましょう的なノリで。表向きは。
アナログがこのまま改めて残っていくのか、一時的なブームで去っていくのか、まだわからん感じではあるのですが、それでもそこに賭けるという判断をしたタワーレコード。正味どんだけ後ろがないねん、という気持ちはありますが、本当にそうしないと生き残れないという危機感だけはバリバリに伝わってきます。できるだけ買いに行きます。

ただ、これは強く言いたいのですが、こういう世の中になった結果、「レア・グルーヴ」という概念は今や「アナログにもデータにもなっていない」CDだけでしか存在していない音源の中にあると思っています。だからどっかきちんと世界中の中古CDを回す市場っていうのは、残しておいてほしいと思う次第です。実際相当そっちもヤバそうですが。