小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド@ビルボードライブ東京のこと

3/31は「観られる時に観ておけ」シリーズ、小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド@ビルボードライブ東京。
ここ30年ライブしてないって言うし、この先もいつあるかわかんないわけですから、そんなレアライブ行かないわけにいかないじゃないですか。そもそもがスネークマンショーでサブカルのニュアンスを知り、ベストヒットUSAで洋楽を知った世代ですから、もう彼を拝みに行きたくて仕方なくて。

バンドは、佐藤輝夫(G)、斎藤誠(G)、琢磨仁(B)、成田昭彦(Ds)、深町栄(Key)という、キーマンの佐藤さんを中心に、過去のアルバムにも参加していたメンツが集結。一番若い斎藤さんが還暦というなかなかエゲツない感じで。
まだこの先もツアーはあるので構成詳細は省きますが、なかなかに洒落た演出でスタートし、今回はニューアルバムのレコ発ライブですので、その収録曲を中心に展開。当然ですが克也さんトークも軽妙ですので、いちいちいい感じの前説から楽曲に入っていくのが気持ちよかったり。

たぶんこれは東京だけなので言っちゃうと、途中で鮎川誠氏がゲストとして呼び込まれ、エフェクターなしアンプ直繋ぎのギターでストーンズの「Satisfaction」を歌い、弾き、去って行ったのですが、そのあまりにもな鮎川誠っぷりと、でもその前後の脈絡が一切なく、曲中の克也さんは「ヘイヘイヘイ」とか掛け声のところにちょっと声をかぶせる程度で、そこだけ全然ザ・ナンバーワン・バンドのライブじゃないっぷりが妙におかしかったり。

最終的には六本木で「六本木のベンちゃん」も聴けて大満足。しかし歌詞中の秀和レジデンスもゴトー花屋もアマンドも健在で、なくなったのは防衛庁という、歌詞が書かれてから35年以上経った21世紀です。

正味ニューアルバムは最高かって言われたら微妙なんですよ。昔ほどのすっとんだセンスもないし、「バラエティに富んだアルバム」つってもそのバラエティの時代幅が80年代までだったり。でも齢77歳喜寿の方にそれをどこまで求めるかって言えば、よくぞアルバムを出してくれた、ライブをやってくれたという気持ちの方が断然強くて。

ただ一点、ニューアルバム収録曲「あるパティシエの愛」を始める前に「ラップがヒップホップに収斂する前の時代」としてFALCOの名前を挙げたときの膝を打つ感はハンパなかったです。そうだった。ラップは黒人コミュニティから生まれたものですが、今に至るヒップホップとしてのスタイルが標準になる以前には、確かに様々な様式のラップがありました。何となく自分の感覚の中で落ちていた部分を埋めてもらえたような気がして。考えてみれば1stアルバムの「うわさのカム・トゥ・ハワイ」もヒップホップ前のラップとしてのTOM TOM CLUBが元ネタなわけで。やっぱり彼は永遠の洋楽の師匠なんだ。

「すごい」とか「度肝を抜かれた」みたいなライブでは全然なかったわけですが、それでも「観てよかった」感は大変なライブでした。東京公演は盛況でしたが、来週の広島公演は急遽前座入れたりして大変そうなので、よければ行ってみてください。

あと、「ヒップホップ以前のラップ」で、この曲が大好きだったことを30年ぶりに思い出しました。