過疎地の謎のレコード屋のこと

全国のレコード屋巡りに際しては、2011年に半年がかりで作成したお手製の全国レコードCD店リストを基にしているのですが、作成後メンテナンスが適当だったりしているうちにここんとこ継続して使用するのがちょっとキツくなってきたため、1月の半ばからほぼゼロベースで作り直しています。現在半分近くは来た感。
まだ先は長いのですが、その途上で気が付いたこと。
都市でも地方でもCDショップは潰れていくわけですが、何故かこの時期に、超僻地に敢えて店を構える剛気なレコード屋がいくつかあったりするんです。
この流れは2010年、仙台の街中にあった中古盤屋パラダイス・レコードが、何故か仙台市内ではあるものの市街地よりもう山形県境の方が近い山奥に、店舗も倉庫も一緒くたの体育館のような巨大店舗を構えて移転したあたりからでしょうか。

PICKUP北海道野付郡別海町別海旭町67-3
北海道別海町にある洒落たセレクトショップ。ここは確か元々普通のCDも取り扱っていた店であったのが、近年になってカフェを併設して更にこういうスタイルになった、はず。Twitter見てると相当こだわった品揃えです。
が、問題は立地。別海町の市街地にはあるのですが、ぶっちゃけこの店を中心に半径30kmの円を描いたとしてその中に恐らく5万人も住んでない。最寄りの駅からは30km、最寄りのインターチェンジから100km以上。どうやってこういう業態の店を成り立たせているのか、全くもってわからない。

Paddy Field RECORDS茨城県那珂市西木倉1663-2
2016年オープン。茨城県、水戸市の北の那珂市に立地するアナログ専門のレコード店。店舗が開くのは土日のみ、メインは通販なのでまあ立地はあんまり気にしなかったのかとは思うのですが、ストリートビューで見る限り、新居を建てられた際に店舗スペース作っちゃいました感。でも「店」を持ちたいという気持ちはわかります。

September Records群馬県高崎市箕郷町柏木沢2248
こちらも2016年オープン。高崎市の市街地から10km以上外れた細い県道沿いの店。バイパス沿いだから車でどんとこい感とか皆無。バスで行こうとすると近くを通るのは日に4往復。しかも恐ろしいのはこういう立地の店なのに通販の気配がないこと。どうしてるのと思ったら店長デザイナーさんでもあるようで。

大平 BIG FLAT山梨県山梨市上栗原847-1
ここも2016年オープン。山梨を拠点に活動するレぺゼン地元なヒップホップ集団stillichimiyaの拠点となる店舗。店長もメンバーが務めます。置いてあるのはstillichimiya関連の音源と中古盤と、地元で取れた野菜とか地元の果物で作ったジャムとか。すげえかっこいい。

山のれこ〜ど屋栃木県日光市藤原1702
「レコード・マップ」は2012-2013号で一旦発行をやめ、2015年版から復活したのですがその復活時から掲載されている、謎が謎を呼ぶ謎のレコード屋。日光市今市にある「NOW」というレコ屋の店長の義父が経営されているということですが、NOW自体なかなかに一筋縄ではいかない感を発しているお店でありまして、その流れで義父が開いた店であればさもありなんとは思いつつ、でもスケールというか次元が通常「店舗」と呼ばれるものと違いすぎる。
レコードマップには「訪れるときは店主が甘党なので手土産を忘れずに」とあります。商売じゃないな、趣味だな。楽しそうだな。

一応まとめると、以前TSUTAYAの件のときに「「ケ」のビジネスから「ハレ」のビジネスへのシフト」という話をしたのですが、その流れは別にTSUTAYAだけではない、ということでしょう。このスケールの店舗であればその品揃えの訴求でもって「わざわざそのために来てくれる」お客で成立するという読みでの経営。
すごく頑張っていただきたいと思います。ただ「山のれこ〜ど屋」だけはもうそれ商売する気ないと思うので、死ぬまで楽しく生きてください。