ヤなことそっとミュート「STAMP」と厄介ロックおじさんのこと

ヤなことそっとミュート / STAMP (EP)

CDのリリースは8月になってからですが、既に配信ではライブ音源のボーナストラック入りで出ているのでそっちで。
notallがCDをタダで配り始めたり、これまではひたすらに接触イベント付きの予約会でCD売上を積むことだけが正義だったはずのアイドル界隈にもだいぶ風穴が空いてきたわけですが、配信で購入したこの音源素晴らしい。
前作のアルバムよりもさらに開いた音作り、そしてもう完全に「過去の元ネタ」が見えなくなりました。
ヤなミューの場合、元ネタと言ってもパクるわけじゃなくて、Sonic Youthみたいなチューニングのギターとか、Pixiesっぽいリフとか、そういうレベルだったわけですが、もうそれすらもなくただ「今のオルタナギターバンド」然とした音を鳴らしています。アイドルグループだけど。

今、日本のバンドで一番「洋楽力が強い」バンドはDYGLである、という意見についてはそこらへん界隈聴いている方なら同意していただけると思います。
これまでの「洋楽好きっす」とか積極的に言ってる日本のバンドは若者も含めて何故かOASISとかPrimal Screamとかレッチリとか「それおっさんが20代の時に全盛だった音なんですけどあなた今おいくつですか?」と問いたくなるようなバンドの音を下敷きに持つバンドが多く、それは「昔のロック最高今はクソ」な信仰を持つ「大人のロック」おじさんによる洗脳の結果かとも思ったりもして、同世代のそういう奴らをきちんと撲殺できなかった我々おっさんの責任も少しはあるのではないかと少しだけ反省もするのですが。

そんな中でDYGLは今まさに英米で鳴っているバンドサウンドとリンクした音を鳴らしていて、来日したその手のバンドと対バンしたり、海外でも今の各国の若いバンドと同列で紹介されたり、海外との同時代性を保った音で非常に若者として正しく歩んでいるわけでありまして。

で、ヤなミューのこのトラック群は音楽として何に一番近いかと言えば、90年代のオルタナ・グランジではなく、私の知っている限りではCloud NothingsとかJohnny Foreignerあたりの、今まさに現在進行形で鳴っているオルタナギターバンドのそれであり、きちんと「同時代性」を持って鳴らされています。すなわち最高。

とはいえ、たとえばイギリスですらそういう新しいところを切り開いていこうというバンドよりも、60年代っぽい音を上手にコピーできる若いバンドがもてはやされる風潮はありますし、日本はもっとそうだと思いますし、なかなか厳しい道とは思いますが、できるかぎり応援していきたいと思ってますので。まだ生で観たことないので、まずはそこからですけど。

とりあえず、「昔のロック最高今はクソ」おじさん、または「いい曲ならプロモーションなんかしなくても売れるんだよ」おじさんについては今後も可能な範囲で積極的に撲殺していきたいと考えておりますので、何卒よろしくお願いいたします。
あと、最近のゆるめるモ!はそういうおじさんの追認を取りに行こうとしてむしろタコツボにハマっている感があったりします。何とかしてほしいと思います。