桑田佳祐のニューシングルのこと

アミューズ&ビクター界隈のここんとこ最大のリリースは桑田佳祐のシングルなのですが、久々にヤバいブツに仕上がっています。
タイトル曲は、ダンスホール・レゲエ的なリズムにシタール込みのサイケデリック音でアレンジして歌謡曲的なメロディもぶっこんでくる、日本の他のミュージシャン誰も作れない音。
それ以降も、どっかで聴いたことあるような、でも思い出せないメロディーを組み合わせる彼の真骨頂みたいな曲や、メロディはサザンぽいけどアレンジはそれっぽくないのとか、全体的にはかなり「攻めた」感じで。

桑田さんのサザン外での活動のアウトプットはサザン本体と相当に連動しているところがあって、サザン直後や並行してリリースする時はかなりソロ独自の音作りを行い、サザンが長期休みの時はソロの音もサザン寄りになって穴を補完するみたいな感じになっているのですが、今回は少なくともタイトル曲と2曲目は完全な「ソロ」の音になってます。

正直最近のサザンの音は「過去のサザンの再生産」としてしか捉えられずにいるので、今回の盤は非常に満足度高い。高いのですが、ここでわからなくなったのが「シングルの定義」。
今回初回限定盤は新曲4曲と別ヴァージョン1曲、既発曲のライブヴァージョン4曲の9トラック収録なんですが。シングル。

元々オリコンがシングルとアルバムをどう判断しているか、という点について以下2006年に書いたこと転載。

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元々は3曲以上入っていれば問答無用でアルバム扱いという基準だったのが、 同一曲のリミックスなら何トラック収録されていてもOKになって(確かglobeからこの基準適用)、そのうちに旧曲のリミックスだったら何曲でもOKになり、いつの間にか新曲でも4曲までならシングル扱いみたいなところに。
だから今は、リミックスアルバムとシングルの違いは実質上何もなく、売り手の方の意図でどっちゃにでも変えられるという状態です。

そこらへんは1999年に凄い勢いで基準が変わっていきまして。ちょうど8cmからマキシへとシングルのフォーマットの主流が移っていった時期。
だから、1/1に出したスピッツの「99ep」は3曲入りなのにアルバム扱いで、7/14に出した浜崎の「Boys & Girls」は10トラック入っているのにシングル。まだそのときは「曲名」だけで数えたら3曲なんだけど、1ヵ月後の「A」では新曲4曲とそのリミックスやカラオケ入れたら14トラックなのにシングル扱い。
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レコード時代は「A面B面各1曲以上は全部アルバム」という明快な基準があり、当時はそれでよかったのですが、メインがCDになってから若干おかしくなり、カラオケはもう入っててもシングルでいいやということになり、さらにシングルがマキシ化してアルバムもシングルも仕様としては変わらなくなってからは、「カラオケがいいならリミックスもよくね?」とか「ライブ・ヴァージョンは?」とか、シングルのお得感を増して売らんかなのためにいろいろ面倒臭い事態発生し、正直今はよくわからない。
たぶん「オリジナルの新曲は4曲まで」という基準はあり、それ以外はもうだいぶ適当という感じなんだろうな、と思うのですが。少なくともそういうルールで行けば松崎しげるのこいつは間違いなく「シングル」でOKなわけです。

それでも1999年頃にすごい勢いでシングルの定義を変えていたのはエイベックスでしたが、最近のエイベックスはシングルに力入れなくなっておりますのでもうあんまり無理言わない。最近いちばん無茶やってるのがアミューズ絡みではないかと思うのです。
今回の桑田さんのもそうですが、去年の福山雅治のシングルは、新曲4曲+過去作のリメイク1曲。さらにファンクラブ限定盤には更にリメイク1曲追加。
ここらへんがいいのなら「新曲が2曲収録された15曲入りセルフカバーアルバム」や「新曲が1曲収録された2枚組130分収録のライブアルバム」は、これはシングルであると言い張ればシングルとしてカウントしても全然OKということになります。

正直、過去から今に至ってアイドル除けばシングルの位置付けは相当変わっておりまして、挙げたような動きは「アルバムからシングルカット」という形ではなくきっちりアルバムに近い「EP」的にひとつの完結した作品として作っているということなので、聴く側としては正直今の方がいいっちゃいいんですが、でもちょっと気持ち悪い。落ち着かない。
でも自分が有名ミュージシャンなら、3枚組36トラック収録のシングルをリリースしたい。お値段はできるかぎり通常のシングルに近い価格で。ファン想いだから。