VIVA LA ROCKから考える自主フェスのこと

VIVA LA ROCK、2014年2015年、今年と3年連続で観て何となく腑に落ちた感がありました。正味「これでいんだな」と。
相変わらずサークルモッシュ、ウォールオブデス、クラウドサーフ上等の現場ではあるのですが、観ていて本当に危ないと思ったことは今回はなく、起きるべき時に起きているように見えました。徐々にではあるけれどオーディエンス側に最低限の物差しができてきているような感じで。

10-FEETのタクマくんの台詞の去年との違いが象徴的で、去年は何度も「ケガすんなよ!」と呼びかけていたのに対し、今年何度も言っていたのは「ケガする寸前ギリギリまで行くで!」という、むしろ煽り。
去年の5月から今年の5月までの1年間の様々なフェス出演を経て、そういう変化は起きたのだろうことは容易に想像が付くのだけど、そこでようやくパンク・ラウド系バンドがこの頃頻繁に行っている大型自主フェスの意味を理解するに至ったわけです。

発祥はHi-STANDARD主催のAIR JAMという理解ですが、2000年代後半になって音楽が円盤から興行中心に動き出してからはいくつかのバンドが自主イベントを大型化し始めます。
10-FEETの「京都大作戦」は2008年以降毎年開催。
ロットングラフティーの「ポルノ超特急」は2014年以降大型化。
SiMの「DEAD POP FESTiVAL」は2015年から野外での開催。
04 Limited Sazabysの「YON FES」は今年初開催だけど、続きそうな気もする。
その他単発的なフェスもいくつかあり。

これらは東京中心のフェスを自分らの地元でもという意志の元で行われているわけですが、もうひとつ「自分たちのルールでやる」という意識も絶対にあると思って。
長く続く老舗フェスはひたちなかの例のフェスの例のトゥーマッチとも思えるレベルの「規制」をはじめとして、いろいろ厳しめのルール&マナーを求められます。
でもやっぱ暴れたいじゃない、という、きっとかつてはライブハウスのフロアで暴れていたであろうバンド側にあった意志がそういう方向に持っていったのではないかと。

VIVA LA ROCKはわざわざ「オーディエンスを最も信頼するフェスです」というフレーズを掲げてやっていますが、ようやくこういう総合フェスにも自主フェス的な、ミュージシャン側の意識に寄り添う形で開催しようとするのが現れたということであり、他のバンド主催自主フェスを経て今年さいたまにやってきたオーディエンスにもそういう意識が浸透してきているということなんじゃないかと思うのです。

正味、すごくいいフェスなんですよ。
たとえば前回の各バンドの感想書きましたけど、小さなステージまで概ね全てライブの演奏は素晴らしくて悪く書きようがないし、観てないバンドの名前を舐めて見ても「出演枠を金で買った」ようなのはひとつもない。
導線すごくダメな箇所もあるし、一番小さいCAVE STAGEはしょっちゅう入場規制かかるし、物販と会場移動の人の流れが干渉しあって先に進めなくなるし、悪いところ挙げれば山ほど出てきます。
でも、観たことない若手観て「すげえいいじゃん」と思ったり、ベテラン観て「やっぱ何度観ても最高だな」って思う。その若手とベテランのバランスもすごくよかったりして、結局「また来年も来よう」と思う。
というかもう来年も行くこと決めました。みなさんも是非。とりあえず今の日本のシーンを俯瞰するにはうってつけです。

ただ、来年は5/3-5の3日間開催直後の5/6に同じ会場でスガフェスがあるんですよ。
若手がどうちゃら言っておいて、でも間違いなく個人的な趣味にフィットするミュージシャンはこっちに偏ることはもう目に見えているわけで、4日間埼玉に籠城するのかどうか、今からとても悩ましい。