最近のHMVのこと

最近タワーレコードか新星堂の話しかしないのでたまにはHMVの話もしようと思いました。

まずは国分寺の店の閉店

HMV単独名義での新店舗は、既に閉店してしまったHMV広島本通(2014年開店、2017年閉店)のオープン以降なく、HMV&BOOKSという複合書店形式かHMV record shopというアナログ特化型だったのですが、国分寺のこの店舗はhmv BOOKS store名義、完全に書店に寄せた業態であり、行ってみたらCD/DVDの取り扱いはレジ近くの小さな棚ひとつ分だけという、なかなか割り切った感じでビビりました。それがオープンからものの1年で閉店と相成ったわけですが。
ただ、この閉店の場合は「そういう業態がダメなんだよ!」と一掃できない事情があります。これ。

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1年でこれだけテナント入れ替わっているわけです。見に行った時にはさらにもう1店閉店セール中。要するにこのミーツ国分寺という施設そのものの集客力に問題があるということで。
ミーツ国分寺は国分寺駅北口の再開発でオープンしたのですが、元々南口には9階丸ごと商業施設の駅ビルがあってそっちでだいたい揃うのに、何で後からさして店の数も多くない4階分の商業施設出してきたのか、そもそもわからないのですが。


HMV新宿は、元々新宿駅の駅ビル内に大きな床面積で展開していましたが徐々に床面積が削られ、先日までは6階の片隅でコンビニ以下の床面積でひっそりと営業していました。それがいきなりB1の地下道の途中に垂直移転、こちらはHMV&BOOKS SPOTという名義で3月7日に営業を始めました。

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「HMV SPOT」という名義では、表参道にコンビニとの合同店舗を出したり実験をしていたのですが、結局今も生き残っているのは大阪・あべのキューズモールの店舗のみ。
笑うくらい小さな店舗ですが、駅と地下街直通という場所ではありますので、明確に好きなミュージシャンがいて予約して購入するような方であれば、ビルの上の方に行かなくてもピックアップできるため、それなりの利便性で今も生き残っているのではないでしょうか。
今回の新宿の店もその知見を踏まえて、正味6階にあったとき以下の床面積ですが、そういう利便性でもって生き残りを図ろうとしているのではないかと思います。


去年の3月にできたHMV & BOOKS HIBIYA COTTAGE。HMV&BOOKS業態の中でも「女性向け」を謳った店舗です。
日比谷・有楽町界隈の書店は、有楽町駅前に三省堂、霞ヶ関寄りにジュンク堂、銀座の方には銀座 蔦屋書店。何とかして特徴をアピールしないことには生きていけない地域です。
で、書店として完全にそっちに寄せた結果、店舗全体の床面積の1割程度にしかならんCD/DVDエリアも、場所柄演劇や映画系厚め、あとは売れ線と子供向けと特集の棚で小規模にシティポップスを展開する程度という感じで。
HMVと聞いて総合ショップを期待して行くと大幅に肩透かしを食らいますが、生き残るためには仕方がない。
ただ、日比谷・有楽町界隈で新譜CDを購入できる店は実はここだけで、銀座にも今や山野楽器本店しかありません。銀座 蔦屋書店は、日本刀は売っていてもCDは売っていません
要するにこの日本有数のハイソ地域にはもうほとんどCD/DVDの需要はないということです。外国人客も非常に多いですし、わからんでもない。


「今CDが売れるジャンル」に絞って注力し始めたタワーレコード、RIZAPに買われて少しずつ店舗数が削られていく新星堂、BtoCからBtoBに舵を切ろうとしているTSUTAYA、総合リサイクルの大規模店舗に活路を見出そうとしているGEO。

HMVはそれらに比べると大きな動きというのはないのですが、アナログに寄せ、書店に寄せ、かつその書店としても地域性に合わせ、利便性を上げ、と、細かいチューニングによって当面のところを乗り越えようとしている感じがします。ただ、その先に何があるのかというと、今のところは「延命」でしかないのはタワーレコードと同じ。

一方、ここ数年CD/DVD販売についてはほとんど動きのない山野楽器は、楽器や教室が堅調なんだろうと思いますが、やっぱ屈強な「コト消費」持ってると強いわ。

タワーレコード新宿店の変遷のこと

タワーレコードは1月に渋谷店を大幅リニューアルして「今音源が売れるジャンル」に大幅に寄せたフロア構成にし、3月16日には店舗ごとそのジャンルに寄せた錦糸町パルコ店をオープン、そして21日には新宿店をリニューアル。「リニューアル」と言ってリニューアルしたのは新宿店はこれが2度目、前回は2012年でした。
というわけで、1月に渋谷店でやったように、リニューアルごとのフロア構成を追ってみます。

-2012

10階 SOUNDTRACK, MOVIE DVD, ANIME, MAGAZINE, BOOK
9階 JAZZ, BLUES, COUNTRY, WORLD, CLASSICAL, NEW AGE
8階 POP/ROCK, SOUL/R&B, HIPHOP, REGGAE, CLUB
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, J-POP

2012

10階 CLASSICAL, CLASSIC DVD
9階 POP/ROCK, SOUL/HIPHOP, CLUB,JAZZ, WORLD, BLUES/COUNTRY
8階 J-POP, K-POP, MOVIE DVD, SOUNDTRACK
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, アイドル, アニメ,ヴィジュアル, MAGAZINE, BOOK

2014(マイナーチェンジ)

10階 CLASSICAL,CLASSIC DVD
9階 POP/ROCK, SOUL/HIPHOP, CLUB, JAZZ, WORLD, BLUES/COUNTRY, 映画
8階 J-POP,アイドル,K-POP
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, ジャニーズ, アニメ, ヴィジュアル, MAGAZINE,BOOK

2019

10階 TOWER VINYL
9階 POP/ROCK, SOUL, HIPHOP, JAZZ, WORLD, BLUES/COUNTRY, CLASSICAL, NEW AGE, 映画
8階 J-POP,アイドル,K-POP
7階 NEW RELEASE, RECOMMENDS, ジャニーズ, アニメ, ヴィジュアル, MAGAZINE, BOOK

渋谷店の1月のリニューアルの一番エグかったところは、床面積の半分以上を完全にイベントスペース化するという恐ろしい割り切りの5階の存在。在庫管理等のコストを考えれば、もう売れないジャンルを細かく揃えて並べておくより、イベントで「売れるジャンル」の数を捌きまくれれば、イベントないときはもう空き地にしておいた方がなんぼかマシである、という現実を見せつけてくれました。

そして今回の新宿店は10階ワンフロアを完全にアナログ盤専用のショップ・イン・ショップにしてしまうという渋谷とは別方向の、でもやはり「売れるジャンル」への割り切り。
その分潤沢な品揃えだったクラシック売り場を9階に移動、広い意味での「洋楽新譜」を完全に全部9階の1フロアに押し込みました。
2012年のリニューアル以前まで遡れば全フロア何らかの形で「洋楽新譜」が含まれていたのに比べると、もう大変な状況です。

でももう既に新譜が速攻サブスクで聴ける状況が当たり前の洋楽、そもそもパッケージを普通に世にリリースするミュージシャンが減りつつありますし、かつリリースしてもものごっつ世に出る数が限られているために日本にまで届かないものもあったりします。
そして届いたとしても、相当に海外からの入荷の量や回数も絞られるようになったのか、リリース日に店頭に並ぶのは相当に限られた有名ミュージシャンまたはタワーとして推したいミュージシャンくらいで、そこに入らなかった人の新譜は、リリースから2週間後にようやく棚に並んでるのを発見した、なんてこともあったりして。
要するに洋楽は売れないだけでなく、配給するにあたっての環境もすごい勢いで悪くなっているため如何ともし難いわけです。

4フロアざっと眺めてみたのですが、特に以前と比べて縮小著しいと感じたのは、テクノやハウス等の非ブラック系クラブ・ミュージック。でもそこらへんは確かにデータかアナログかになり、今一番CDリリースされていないジャンルだと思いますので、納得せざるを得ないのでして。

というわけで、10階のTOWER VINYL。

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悪くないです。新譜としてリリースされるアナログは相当に網羅し、中古盤も潤沢ですし価格的にもHMV record shopよりは割安感もあります。
まあ高い奴はアホみたいに高くて、Guns n'Rosesの1stのオリジナルレイプジャケが60,000円とか笑っちゃう値付けのもありますが、今はそういうレア盤はどこも似たような感じではありますから。

そしてもう一点特筆すべきは、店内のこんな地図。

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少なくとも表向きは新宿の他レコード店と喧嘩するつもりはなく、仲良くアナログ文化を発展させていきましょう的なノリで。表向きは。
アナログがこのまま改めて残っていくのか、一時的なブームで去っていくのか、まだわからん感じではあるのですが、それでもそこに賭けるという判断をしたタワーレコード。正味どんだけ後ろがないねん、という気持ちはありますが、本当にそうしないと生き残れないという危機感だけはバリバリに伝わってきます。できるだけ買いに行きます。

ただ、これは強く言いたいのですが、こういう世の中になった結果、「レア・グルーヴ」という概念は今や「アナログにもデータにもなっていない」CDだけでしか存在していない音源の中にあると思っています。だからどっかきちんと世界中の中古CDを回す市場っていうのは、残しておいてほしいと思う次第です。実際相当そっちもヤバそうですが。

謎のメンバーがいるバンド・グループのこと(2)

先日「謎のメンバーがいるバンド・グループ」のネタをやったら予想をはるかに超えて見ていただけて、いろいろと「この人も」というレスをいただきまして、随時追記していったのですが、せっかくなので映像探してきてがっつり再度。

グループ魂
港カヲル(永遠の46歳)、バイト君(大道具)の2名。そもそも港カヲルという存在自体、ジェームス小野田のオマージュ的なところがありますので、もうこれは入れるしかないと思いましたが、正味コントグループでもありますので、なかなか位置付けとしては難しいかもしれません。

Galliano
昨日あんまり面白かったので追記で動画まで貼ったのですが改めて。
元Style CouncilのMick Talbotも参加したアシッドジャズ系のバンドですが、パート名「The Vibe Controller」のメンバーMichael Snaithが、口上で呼び出されて飛び出てきて、でも結局概ねうろうろするだけという、「歌いもしないジェームス小野田」状態で最高です。

Frankie Goes To Hollywood
彼らの2ndアルバムのジャケットにメンバーの各担当パートがアイコン化されていて、例えばメインヴォーカルのHolly Johnsonの場合はマイク柄なのですが、彼と同じくパートとしては「Vocals」とされているPaul Rutherfordのアイコンは足跡。

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つまりダンス要員ぽい感じで記されているのですが、実際見てみても特に踊るのが達者には見えません。
彼らの場合、楽器隊もがっつり弾けているかは甚だ怪しくというか、この映像観る限りまともに弾いちゃいないので、これどこまでが「謎メンバー」なのかの線引き難しい。

Secret Goldfish
90年代に一部の層に熱狂的に受けていた大阪出身のバンド。当時UKで受けていたマンチェスター的なところとシューゲイザー的なところのいいとこ取りをしたような感じの音でしたが、メンバーの一人、近藤進太郎のパート名は「Dance」、でも彼も特に踊るのが達者な感じではなく、というかそういうUKノリでしたので、Bezみたいなメンバーということでいたのではないかと思います。
が、1992年に本拠地を東京に移す際に脱退しました。

Have a Nice Day!
パフォーマーの内藤さん。完全にBezというか、実際現在唯一のオリジナル・メンバー浅見北斗も「Bezのような存在」と公言していたのですが、けっこう壮絶な対立もあったらしく、2016年脱退。

野獣のリリアン
音源一般流通してないバンドですけど、何回かライブは観ているので。ただでさえメインヴォーカルが3人、ギターが3人いる渋滞状態にもかかわらず、歌っている時間より座っている時間の方が長い飯田和敏さんと、着ぐるみのため空間の容積を占拠するさゆキャンディもいて、もう全体的にトゥーマッチでいろいろおかしいバンド。

ぴんから兄弟
はてブのコメントに「ぴんから兄弟の宮五郎」という文字列見たとき爆笑しました。そうだ。そうだけどそこ触っていいのだろうか。でも映像見てその絶妙な「弾いてなさ」はこれやっぱり見ていただいた方がいいだろうと思いました。TM NETWORKの木根さんを越える弾いてなさと存在感。実際ベースは弾けてもギターは弾けないそうです。じゃあ何でそれ持ってそこに立っているんだ。最高だ。

2回やってみた結論としては「意外にいるな」ということと、「謎っぷりも人それぞれだな」ということ。ポピュラーミュージックに決まりなんてないんですから。みんな違ってみんないい。

謎のメンバーがいるバンド・グループのこと

瀧のことについては書き始めるとただ感情に委ねてしまうことになるのでここでは書かないでおこうと思うのですが、電気グルーヴでの彼のパートは「瀧」であり、インスト曲も多く持つユニットなのに楽器は一切触らない、でも確固として正式メンバーであるという謎の存在なわけですが、古今東西探してみたらいくつかそういう「謎のメンバー」がいたので、そういうのを並べてお茶を濁そうと思います。

Happy Mondays/Black Grape
Bezという世界で一番有名な謎のメンバーを擁するバンド。パート名は「Vibes」または「Bez」。完全に東の瀧、西のBez状態ですが、西の方は東以上にドラッグまみれなことが世間に知られているにも関わらず作品の回収もなければ逮捕すらないので、やっぱり国っていろいろだなと思います。

Flowered Up
マンチェスター・ムーブメントに乗って一瞬ですがそこそこヒットした、歌ってるんだか呻いているだけなんだかよくわからんヴォーカルが特徴的なUKのバンド。正式メンバーではなく準メンバー扱いですが、フラワーロック的に花びらっぽい被り物を施されたうえで、踊ったりもしくはただステージ上を徘徊するだけのメンバーがいました。

米米クラブ
日本で瀧と双璧を成す存在といえばジェームス小野田。パートは「ボーカル」ですし、実際歌えば素晴らしいのですが、私が観たときの小野田さんはだいたい自転車乗っていたような気がします。

Hermann H.&The Pacemakers
このMVのような感じで、一応コーラスは入れますが他はだいたい暴れているだけの正式メンバー若井悠樹、担当パートは「ウルフ」。一度何かで観たことがありますが、その時はステージ上で竹刀を振り回していたと思います。現在再結成してぼちぼち活動中。再結成メンバーにはもちろんウルフもいます。

レシーバーズポンポンヘッド
先日紹介しましたが、ステージ下手側でひたすら踊っているというか煽っている正式メンバー、「長州 力(ちから)」という方で一応パートとしてはサンプラーなのですが、キュー出しをしたらあとはだいたいこんな感じだったようです。

人生
電気グルーヴの前身なわけであり、基本的に生演奏するバンド形態でもないので、ステージに立っている人間の多くが瀧状態だったこともあるのですが、それ以上に、ライブをやる時にはほぼ必ずステージ上に「木」がいました。木のコスプレをしてライブの最初から最後までただそこに立っているだけのパート。しかも初代「木」が脱退した後、二代目「木」が加入しましたので、彼ら的には大切なパートだったようです。多分。

絶対直球女子!プレイボールズ
ライブを「試合」、脱退を「退団」、研修生が正式メンバーになることを「育成選手を支配下登録する」と言う、大変に面倒臭い野球縛りの女子アイドルグループですが、メジャーデビューまでは「ボールボーイ」と呼ばれる男子2名が、当然正式メンバーではないのですが常にステージ上に帯同していました。歌うわけではないのですがとにかく煽って煽って場を作る。メジャーデビューに際して一旦はクビになったのですが、限定的に復活したりしているようです。

で、こういう謎のメンバー的な存在のはしりって誰だよって調べてみたのですが、確認できた限りそういう存在に一番近いのはザ・スパイダーズの井上順じゃないかと思うのです。
一応堺正章とのツイン・ヴォーカルではあるのですが、後から加入したメンバーの割には楽器を演奏するわけでもなく、堺正章がメインヴォーカルを取るバラード的な楽曲の時は素晴らしく棒立ち。
自身も自虐的に自分のパートを「セカンド・タンバリン」と言っていましたし。
いや、でも世界に他にいないよ、唯一無二だよ、セカンド・タンバリン。

あと、亡くなったけどスカパラのギムラとか、脱退したけどGacharic Spinのダンサー勢とかもこの枠に入れていいでしょうか。考えてみればパートは普通に割り当てられていても、ロクに弾かずに暴れていたシド・ヴィシャスだってこの枠かもしれません。
うん、まあこんな感じで。何か有名なの忘れているような気もしますが、いいや。

自分が一番最初に電気グルーヴを観たのは1991年の梅田アム・ホール。TMNとのカップリング・シングルのレコ発でした。フックアップしてくれた恩人のはずのTMNを、それはそれは凄い勢いでディスっていまして、心底「こいつら最低で最高だな」と思ったことを覚えています。
次に戻ってきたとしたらまたそういう「最低で最高」ができると思うので、是非それをお願いしたいと思っています。心の底から。

<追記>

  • Arrested Developmentのおじいちゃん
  • ファンキーモンキーベイビーズのDJケミカル
  • SOIL & "PIMP" SESSIONSの社長
  • 渋さ知らズやモダンチョキチョキズ、海外だとThe Polyphonic Spreeあたりは「メンバー」の概念そのものが他のバンド・グループと違いますね。

<再追記>

  • The Stone Rosesのスタッフだけどステージで踊っていたCressa
  • Frankie Goes To HollywoodのPaul Rutherford
  • Secret Goldfishの近藤進太郎
  • Have a Nice Day!の内藤さん
  • POLYSICSのPOLY-2

気志團の早乙女光もそれっぽいけど、入れるとまた解釈が拡大しそうな気がする。どういう解釈やって言われたら言葉で説明しにくいですけど。

<再々追記>

  • 猛毒の東野A心。パート名は悪徳マネージャー

元Style CouncilのMick Talbotも参加したアシッドジャズ系のバンドGallianoのMichael Snaichが、口上で呼び出されて結局うろうろするだけという、「歌いもしないジェームス小野田」状態で最高です。

いやあ、知見が集まると楽しいですね。これ集めたところで何の役にも立たないところ含めて。

<再々々追記>
(2)も作りました。

タワーレコード錦糸町パルコ店のこと

正直、CD販売チェーンが普通に新店舗を出すとは思っていなかったのでびっくりしましたが、昨日3月16日にグランドオープンした東京の錦糸町パルコ内にタワーレコードがオープンしました。

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元々錦糸町には駅から徒歩5分くらいのところにあるオリナスモールにタワーレコードが入っていたのですが、2018年2月に閉店。既にその時にはパルコ全体のオープンは決まっていたので、オリナスモールとの契約更新のタイミングで一旦店を畳んでパルコのオープンを待っていた臭い感じもしなくはないですが、実際のところはよくわかりません。

で、その前の店の時からアイドル系イベントをよく実施していた店舗ではあったのですが、今回自ら「アイドルの聖地」を掲げてオープンした店舗はまさにその言葉に偽りなしの、なかなかエグい店舗でした。

まず予想以上に床面積が広い。フロアマップ見たらそのなかなかなサイズ感わかっていただけるでしょうか。現秋葉原店よりは大きいです。入口を入って右に女性アイドル、左に男性アイドルの棚が相当に大きく取られ、かつ店の奥には相当大きなイベントスペース。
J-POPについてはそこそこ揃えてはいるものの、洋楽全般については棚1列程度に収められていて、男女アイドルの棚を足したらそっちが軽く凌駕するレベルの著しく偏った品揃え。
先日の渋谷店のリニューアルも相当でしたが、錦糸町のこの店は店舗丸ごと所謂接触イベントの効果も込みで「今CDが売れるジャンル」に寄せまくっている印象。

よくぞここまで振り切ったという気持ちもありますが、既存の中型店舗をこういう形でここまでリニューアルすることは既存顧客を大きく切り落とすことにもなりますので、まだ顧客が付いていない「グランドオープン」の形で仕掛ける必要があったのだろうという想像もできます。

が、そういうふうに「CDが売れる」ジャンルに寄せまくっている状況を見るにつけ、確かにそれは正しい選択ではあると思うのだけど、もうそこにしか生き残るための術がないからそこに行かざるを得ないとも言えますし、バランスの良いオールジャンルのスタイルをある意味「捨てた」ことは「撤退戦」の趣きすらあります。
しかも、そういう戦術でイベントがない時の売上がどこまでいくのか。結局お祭りの時の縁日みたいなことになってしまうのではないかという不安も。
21日に行われる新宿店のリニューアルも近しい方針のようで、この本土決戦でタワーレコードは生き残るのか、玉砕するのか。

で、そこまでドラスティックに方針を変更していく余裕すらなさげな他のチェーンはどうなるのか。

とりあえず、タワーレコードがそういう偏った品揃えになったことで、錦糸町駅前に唯一残った「街のレコード屋」であるセキネ楽器店は、もはや演歌専門店状態なのでカブり一切なくて安心です。
アルカキットにある新星堂がどうなるのかはよくわかりません。

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アメリカのDVDレンタル事情のこと

先日のTSUTAYAの話、個人サイトを開いてから今までの20年で、断トツで最大のPVを記録して正味ビビっているのですが、いただいたコメント等の中にアメリカのDVDレンタルと紐付けて語られているものが多くあり、かつそのご意見の中でのアメリカのDVDレンタル事情の認識の具合がかそれぞれで結構異なっていらっしゃいまして。
じゃあそれ実際のところはどうやねんと思ったので、調べてみました。

結論としては、アメリカのDVDレンタル、全盛期と比較すれば見る影もないことは間違いないにしろ、意外としぶとく生き残っていました。

店舗型のレンタルについては、最盛期には世界に9,000店舗を展開していたBlockbusterが2013年11月に直営店舗の全店閉鎖を発表した件が当時大きく報道されましたが、2014年1月に実際に閉店になってそれで全米からレンタル店舗が一掃された、というわけではありませんでした。

見つけた中で一番大きい店舗型のチェーンがFamily Video
アメリカの中部から東部にかけてとカナダの一部地域で現時点で666店舗を展開しています。もちろん、BlockbusterもMovie GalleryもHollywood Videoも張り切っていた頃に比べれば屁みたいな数ですし、現在の日本でもTSUTAYAとGEOだけで2,000店舗を越えるわけですから、それっぽっちかよと言われればそうなんですけど。でもそれだけまだ残っている。が、数年前の数字を見たら700店舗以上って書いてあったので、やっぱりヤバいっちゃヤバい。

次にRedbox。サイトは米国以外アクセスできんようなのでリンクなし。
商業施設や空港に設置された自動販売機型のDVD・ゲームのレンタルです。自販機なので1台最大200タイトルくらいまでしか入りませんが、価格を下げ、地域特性等を相当練って格納タイトルを選ぶことでそれなりに効率的に収益を上げられるようになっているとのこと。言うても人件費もテナント料も最低限で済むというのは大きい。
今いくつほど「KIOSK」と呼ばれる自動販売機が設置されているのかロケーターでは実数とてもカウントできなかったのですが、2018年6月時点で41,500か所以上というのは見つけました。調べて出てきた過去最大の数字が43,500で、そこから減少はしていますので、全体としての状況はこちらもあんまりよろしくないのかもしれませんが、それでもこの数です。

もうひとつ、DVD Netflix。こちらもサイトはアクセスできず。
Netflixが日本に上陸したのは配信になってからですが、元々は1997年にアメリカでサービスを開始した宅配型DVDレンタル業。日本でも当たり前になった「定額借り放題制」を編み出して、宅配型DVDレンタル業の全米トップにのし上がりました。
2007年からは今のスタイルのストリーミングサービスを開始して現在はそちらの方が圧倒的に主流になっていますが、宅配型DVDレンタルもまだサービスを継続しています。
決算資料(P.11が概要として具合がいいです)見る限り、DVDの売上はストリーミングの1/20を切り、売上的にはそろそろ撤退も考えていい規模かなあとは思いますが、まだ生きています。

という感じで、日本以上に斜陽であることは間違いないにしても、それなりに生き残っている、というのが実際。でもやっぱり日本に入ってくるのは「アメリカではレンタル壊滅」という話が非常に多く。
これ何でだろうと考えたのですが、Family Videoのストア・ロケーターやRedboxの外部ロケーターサービスを見たら何となく理解できました。
アレです。アメリカの大統領選で多くの有識者やマスコミが全く想定していなかったトランプ氏が結果として勝利した、というのとだいたい同じ構図だろうと。

西海岸、東海岸の都市部にはFamily Videoの店舗は全くありませんし、都市でも街中ではなく郊外がほとんどです。人口比で考えるとRedboxのKioskの都市部での密度も低い感じです。
都市部は回線の環境もよく、所得も高いので高速回線での視聴に何の問題ありませんから、ディスクが必要になる状況は多くは生じません。日本人もおよそ西海岸東海岸等の都市部にほとんどの人が住まわれていて、そういう都市環境で暮らし、そういう現地の人たちと交流している結果としての体感が、発信として日本に届いているということでしょう。

でも郊外や地方になるといろいろと事情は違ってきます。
アメリカのインターネット回線は、日本以上にケーブルTV網が発達したが故にそれらの企業がプロバイダーサービスを兼ねるパターンが多く、それが圧倒的に強いためにあまり競争原理が働かず、日本と比べて遅い割に高いという話を聞きます。日本以上に所得によって高速回線の恩恵を受けられないこともありそうですが、さらにこういう各地域の回線状況の地図を見てみるとそれ以上に都市部とそれ以外の地域格差が大きいことがわかります。

DVD Netflixなんかは、単体で生きられるレベルでお金が回っている限りは生活インフラ的に残しておく、みたいな選択をしているのかもしれません。田舎のローカル線的に。DVDレンタル全体にしても、今以上に細くはなるでしょうが、サービスは今後も結構長期にわたって継続されそうな気がしてきました。

一方日本は、高速回線の家庭への普及率は世界有数ではあるのですが、今のCDの売り上げが示すようにパッケージに対する信頼も世界有数です。
今後レンタル店舗ががっつり減ることは間違いないというか、前回の話の通り、TSUTAYAは恐らく計画的な縮小に向かっているのであろうと想定されることからも、レンタルという業態は「終わりの始まり」の地点は既に通り過ぎているとは思うのですが、「全滅」はもう少し先の話になるのかな、と今回調べながら思いました。

とりあえずTSUTAYAとGEO以外のレンタルチェーン、ビデオ1アリオンUSVビデオインアメリカが生きている間はまだ大丈夫だ。今の時点でだいぶしんどいかも知らんけど。

ただ、5Gが世間に普及した頃にはアメリカも日本も一部を除いて全部死ぬ。たぶん。

TSUTAYAの閉店っぷりが容赦ないこと

年初以来のTSUTAYAの話。
今年の閉店っぷりがけっこうえげつないことになっています。
2017年には年間70店舗以上、2018年には90店舗以上の閉店があったのですが、今年はここまで確実に毎月10店舗以上逝ってます。
以下、確認できた閉店店舗。

01/06 TSUTAYA 幸手店(埼玉県幸手市)
01/06 TSUTAYA 上尾原市店(埼玉県上尾市)
01/14 TSUTAYA 上尾駅前店(埼玉県上尾市)
01/14 TSUTAYA さいたま新都心店(埼玉県さいたま市中央区)
01/14 TSUTAYA 砥部店(愛媛県伊予郡砥部町)
01/20 TSUTAYA 新小岩店(東京都葛飾区)
01/20 TSUTAYA WILL 久万の台店(愛媛県松山市)
01/27 TSUTAYA 大倉山店(神奈川県横浜市港北区)
01/31 TSUTAYA 宇都宮鶴田店(栃木県宇都宮市)
01/31 TSUTAYA 仁戸名店(千葉県千葉市中央区)
01/31 TSUTAYA 祖師ヶ谷大蔵店(東京都世田谷区)
01/31 TSUTAYA 高須店(高知県高知市)

02/03 TSUTAYA フジグラン十川店(香川県高松市)
02/10 TSUTAYA MINANO分倍河原店(東京都府中市)
02/11 TSUTAYA 醍醐店(京都府京都市伏見区)
02/11 TSUTAYA JR野田店(大阪府大阪市福島区)
02/11 TSUTAYA フジグラン神辺店(広島県福山市)
02/17 TSUTAYA 学芸大店(東京都目黒区)
02/17 TSUTAYA 武蔵中原店(神奈川県川崎市中原区)
02/24 TSUTAYA 南宮崎店(宮崎県宮崎市)
02/28 TSUTAYA 天神駅前福岡ビル店(福岡県福岡市中央区)(移転)
02/28 TSUTAYA 名護店(沖縄県名護市)

03/03 TSUTAYA すみや富士中央店(静岡県富士市)
03/03 TSUTAYA フジ西宇部店(山口県宇部市)
03/06 TSUTAYA 京王稲田堤店(神奈川県川崎市多摩区)
03/12 TSUTAYA フジグラン宇部店(山口県宇部市)
03/17 TSUTAYA ときわ台店(東京都板橋区)
03/17 TSUTAYA 桃山店(京都府京都市伏見区)
03/17 TSUTAYA 箕面牧落店(大阪府箕面市)
03/20 TSUTAYA 園田駅前店(兵庫県尼崎市)
03/30 TSUTAYA BOOK STORE 神谷町駅(東京都港区)
03/31 TSUTAYA 旭川神居店(北海道旭川市)
03/31 TSUTAYA 登別店(北海道登別市)

3月に閉店する店舗、現段階で裏が取れない噂レベルまで入れると16店舗まで行きます。ヤバい。

今回いろいろ気になるのが、地域的な偏り。およそこれまでの閉店は、ある地域にたくさんある店が少しずつ間引かれるように閉店される感じが多かったのですが、だんだんそんな感じじゃなくなってきています。

埼玉県上尾市は市内の2店舗が1月に一気に1週間程度の差で閉店。一応TSUTAYA系列の書店はまだ市内に2店舗あるんですけどいずれも純粋な書店で、レンタルできる店はなくなりました。

山口県宇部市も市内3店舗のうち2店舗が閉店。上尾市も宇部市も閉店したのは同じフランチャイジーの店なので、だんだんフランチャイジー側がレンタルという業態に愛想を尽かしつつある感じではないかと。

昨年小田急商事がTSUTAYAフランチャイジーから一気に手を引いたことで、小田急沿線の駅近店舗がすごい勢いでスカスカになったりとか、大阪府豊中市のTSUTAYAが、4店舗あったのが昨年1年の間に一気に3店舗閉店してロードサイドの1店舗だけ残ったりとか、というのもそういう感じで。

CCCの思惑、フランチャイジーの経営状況によっては、今後もっとすごくなるような感じで。ていうか、昨年六本木駅そばのTSUTAYAが消えて、この3月にはミッドタウンの店も消え、六本木ヒルズの店に完全に集約する状況を見るにつけ、聖域などない感がひしひしと。多分今年は100店舗以上死ぬ。

<追記>
こちらもご参照いただけると幸いです。
https://wasteofpops.hatenablog.com/entry/2019/01/17/000000

「桜ソング」についてのコラムのおまけ的なこと

音楽ナタリーで「桜ソング」についてのコラムを書きました。

“桜ソング”の栄枯盛衰 ~2000年代の爆発的なブームはなぜ起こったのか~

これまで「桜ソング」についてはリリースしたものを挙げていただけだったので、今回は自分の中でもいろいろ点と点が線で繋がる感があって大変に良い機会でした。当初より話がでかくなって大変ではあったのですが。

以下、原稿書きながら、使わなかったり余計に思ったりしたこといくつか。

  • 音楽だってインディーズ等のごく一部を除けばビジネスとして回しているわけですから、こういう「使える」モチーフを使って少しでも売れるといいな、という行動はむしろ自然なこと。実際名曲もたくさん出ていますし。ただ本当に雑な企画の季節ソングでデビューして着うたが去った時点できれいにいなくなったような人まで、無闇に数が群がってしまったことが「桜ソング」の不幸だったなあ、と。
  • 70年代に多くの作詞家さんが続々季節ネタを取り上げ始める中、恐ろしいほどの数の歌詞を量産しているにもかかわらず、まったくと言っていいほどそっちに行かなかったのが阿久悠先生。オリジナルなモチーフで独特の世界を作り上げることにかけては本当に天才的でしたから、すごく納得度高い。
  • ユーミンの歌詞は、情景を印象的に描写しつつ少し季節感を加えることで本当にその景色が頭の中で像になる、すごく絵画的な歌詞の作り方をしているなあと今回改めて。でも「卒業写真」は、卒業して随分経ってからアルバムを見返していろいろ思う歌なので、卒業ソングかもしれないけど春の歌じゃない。
  • スピッツは植物の他にも虫とか動物がモチーフというか歌詞の発想のキーワードになっている曲が異常に多いですが、独特の存在感のファクターのひとつはそういうところかもしれないなあ、と思いました。ユーミン(特に初期)が様々な風景を歌詞の媒介にしているのと対にして語れるかもしれない。
  • レミオロメンは「3月9日」が有名になりすぎて、ベスト盤に収録されて先行配信もされた「Sakura」というそのままズバリの曲も、いい曲なのにあんまり広まらない。
  • 松田聖子の「チェリーブラッサム」は、タイトルこそ桜なんですが、歌詞で「春」を表すワードは「つばめ」くらいしかなく、歌詞全編に込められた「新しい始まりへの期待」のニュアンスをタイトルに託しているのだと、今回ようやく気付きました。つうかこれ取りようによっちゃウェディング・ソングですね。
  • 「卒業」ソングとして有名な「贈る言葉」は、金八先生の主題歌だったこともあってそういうイメージが強いですが、歌詞読んでみると季節感はまったくないし、何となれば「女性と別れるにあたって何かええこと言ってみるが最後まで聞いてもらえなかった男」の歌としても捉えられます。実際武田鉄矢自身「失恋ソング」だと語ったこともあるようです。
  • 同じく長渕の「乾杯」にも季節感のある歌詞はなく、1番は何となく卒業っぽい雰囲気で、2番は何となく結婚っぽい雰囲気で、そして結果としてどちらにもアジャストしてしまった、高性能ハイブリッド型お祝いソング。

「女がいる」バンドのこと

最近ふと思ったのが、最近日本はガールズバンドやメンバーに女性が混じっているバンドが非常に多いのに、海外それほどでもねえな、ということ。
特に最近の日本には「女性メンバーはいるけどフロントじゃない」バンドがすごく増えている気がするのですが、そういうバンドは最近の欧米には少なく感じます。

Talking Heads、Thompson Twins、The Dream Academy、New Order、Sonic Youth、Pixies、Smashing Pumpkins(初期)、My Bloody Valentine、Suede(デビュー前)、Ash(中期)、The White Stripesと、80-90年代あたりには有名バンドにもそういうスタイルそこそこ見かけたのですが、21世紀に入ると最近は本当にいない気がする。The Zutons、Johnny Foreigner、Grouplove、Los Campesinos!、ALVVAYS。さくっと思い出せるのこれくらいでしょうか。いいバンドはたくさんいますが、メジャー度で言うと全然違う。

ここら周りをよく知るために、3つのパターンで「女性がバンドにかかわる最古」をできる限り調べてみました。昨日Twitterにこの件投げてみたら貴重なご意見いただけました。ありがとうございます。


<欧米>

最古の「フロントじゃない女性メンバーがいる」バンド:Velvet Underground(Maureen Tucker)(1967)
「世界初のオルタナティブ・バンド」と言ってもいいVUですが、こういうところも独特、と言っていいのでしょうか。しかもバスドラが上向いていたり立って叩いていたり、ドラムセッティングもオルタナティブ。
【3/7追記】
1962年にイギリスで結成されたThe Applejacksのベーシストが女性という情報をいただきました。
同時期のブリティッシュ・ビート系のバンドには他にも女性メンバーのいるバンドがいそうです。ここらへんちゃんと聴かなきゃ駄目だな。

最古の「フロントが女性の」バンド:Ike & Tina Turner Review(1960)
これは本当に確認できた限りで。元々Tina Turnerも前にいたヴォーカルからメンバーチェンジの形で入ったという話ですし。ただこの頃は「ソロ歌手とバックバンド」という形がまだ一般的でもあり、このような形でヴォーカルと楽器の人間が併記されるバンド名というのは正味あまり多くないとは思います。
「ロックバンド」的なところを探ってみると、Jefferson Airplaneが相当に早そう。Starship時代まで在籍したGrace Slickが女性フロントとして有名ですが、彼女の前に在籍していたSigne Toly Andersonという女性が今のところ確認できた最古。

最古の「全員が女子の」バンド=Goldie & The Gingerbreads(1962)
これはWikipediaにも「メジャーレーベルと契約した最初の全員女性のバンド」と書いてあるので信憑性高い。思ったよりいい感じの演奏、ベースがオルガンのフットペダルなのがいかす。
ただ、こういうパーマネントの形式でなければ1940年代にInternational Sweethearts of Rhythmという全員女性のビッグバンドもいたということで。ただどうも戦場の慰問バンドの色が強そうなのと、モーニング娘。方式でメンバーがじゃかじゃか入れ替わる形で継続しているバンドなので、除外。
実はこれは調べてるさなか「もしかしてこれThe Shaggsってことになるんじゃないのか…」と少しドキドキしていたので、真っ当なバンドがいてよかったです。


<日本>

最古の「フロントじゃない女性メンバーがいる」バンド:サザンオールスターズ(1978)
これ、もっと昔に遡ってもいそうな気がするのですが、見つからなかった。フォークグループには時々メインヴォーカルではない女性もいらっしゃるようですが、ここでは除外します。つうか下の麻生レミのような状況もあり得るからなかなか難しい。
【3/7追記】
「シュガー・ベイブは?」というお声をいただきました。そうでした。1973年結成、大貫妙子さんがヴォーカルを取る曲もありますが基本はキーボード&コーラスですね。


最古の「フロントが女性の」バンド:麻生京子とブルー・ファイア(1965)
内田裕也さんとの関わりも深い麻生レミが麻生京子名義時代に一時的に結成したこのバンドが、多分最初の女性フロントバンド、じゃないかと思います。その後は内田裕也とザ・フラワーズに参加して、内田裕也ヴォーカルの時はサイド・ギター弾いていたので、その時は最古の「フロントじゃない女性メンバーがいる」バンドとしてもいいんじゃないかという気もしますが、ここらへんなかなか微妙。


最古の「全員が女子の」バンド=ピンキー・チックス(1967頃)
プリンセスプリンセスが「ガールズバンドの元祖」みたいな紹介のされ方をされると、ZELDAやタンゴ・ヨーロッパ忘れんなよと思うのですが、その前には後にジューシィ・フルーツに参加するイリヤもメンバーだったガールズがいます。
これが最古かと思ったら、グループ・サウンズ全盛期に「女性だけのバンド」として結成されたバンドがありました。
とはいえ、ピンキー・チックスもガールズも、非常に企画色の強いバンドではありますので、やっぱZELDAでええんちゃうの。

意外に欧米と日本とで時期に思ったより差がないし、女性ばかりのバンドや女性フロントのバンドについての流れもあんまり差がない。
ただやっぱり「フロントじゃない女性メンバーがいる」バンドについては、今の日本が特異値を叩き出している感があって。
で、何でこんな違うんだろうと考えたのですが。

  • 大学の軽音部という、男女がごっちゃになる場が、日本の方が多いのではないか
  • 欧米は昔のR&Bの時からの、ごっつ上手い女ヴォーカルを男バンドが支える的な意識がまだあるのではないか
  • 欧米はポリティカル・コレクトネスが意識されすぎて「男が前で女が後ろ」的なスタイルが逆にキツいのではないか

とか考えるのですが、結論出ず。
ただ、日本では女声がフロントと言えるのか言えないのか微妙な、しかしツインヴォーカルバンドとしては世界的に見ても唯一と言っていいスタイルを持つBarbee Boysや、圧倒的に「意志を持つ女性ヴォーカル」のオリジンとしてNokkoが君臨したレベッカや、全ての女の子にバンドの門を開放した感のあるチャットモンチーという、歴史上のエポック的なバンドの存在によって女の子が自由にバンドに参加する時代が作られていったわけで、結局そういう歴史の違いかも、とも思ったり。

とりあえず、今の時代の日本は、私が音楽を聴き始めてから一番自由な感じがしていて、すごくいいです。

【3/7追記】
はてなのコメントでもいろいろいただいています。Arcade Fire、忘れてました。ベルセバ、「最近」と言うにはベテランすぎると思って外しました。Dirty Projectors、初期のソロユニットの頃から情報がアップデートできてませんでした。
「脱バンド化」的なところは確かにそうだなあ、と。日本は今もバンド的な形で音楽活動をすることが多いですが、欧米はヒップホップやソロが多いということを抜きにしても、もっと緩い結び付きでやってるのとか、体としてはソロでも実際の活動上では固定的なメンバーでやるとか、「バンド」等の従来の枠にこだわらずにやってる人、確かに多いです。こうやって知見が深まっていく。素晴らしい。

Weezerの「Weezer(Black Album)」のこと

Weezer / Weezer (Black Album)

Weezerのアルバムには大きな外れはないのですけど、今回ははっきり「当たりや!」と思いました。
前作もよかったんですよ。各曲のメロの立ちっぷりがハンパなくて。ただ今作はこれまでになくアルバム通しての統一感がすごい。そしてギターは確かに鳴っているのに全くもってギターバンドの音に聞こえない。

ギターバンドっぽくない音は昔からやっていた。2005年の「Make Believe」の「This Is Such A Pity」とか初めて聴いた時ゲラゲラ笑ったし。
ただ今作はああいう「奇をてらった」感は全曲一切ないのに、でも明らかに質感は違う。聞いてみたら今回全曲鍵盤での作曲というじゃないですか。なるほど、それでこうなるのか。

Weezerの1stアルバムは300万枚売れたのですが、正味その枚数以上の影響を全世界の音楽に与えたと思っていて。たとえば彼らはなかなかそのジャンルの中心としては語られないですが、EMOというジャンルはこのアルバムがなければあそこまで大きくなってなかったと思いますし。

そしてそういう音から少しずつ新たな音楽性に突入して徐々に徐々に音を変えていき、今作もこれまでのWeezerの延長線上にはあるものの、そういう感じなので1st聴いてからいきなり今作を聴くと、別のバンドじゃないのかと思うほどの違い。
だから、こんなにすごく健全に「育っている」バンドってなかなか他にないよなあ、と思う次第です。

あとはリヴァースの日本人の嫁が、同じく日本人のSnuffのダンカンの嫁のように、どうしようもない入れ知恵をもっとガンガンしていただきたいと思います。

日本人嫁がいらない入れ知恵をするとこういうことになります。最高。