SUMMER SONIC 2018のこと

土日はサマーソニック行ってきました。
とりあえず観たやつ全部はTwitterで触れているので、ここでは特筆したいのを4組。

Dream Wife
確かにパーツパーツではパンク・オルタナティブなところもあるのだけど、ライブで全体的に感じたのはニューウェイブ感。それでも帰って音源聴くと「うん、やっぱオルタナだわ」ってなる。
このライブとの差異は結構面白い。出す曲出す曲微妙に意匠が異なっているので、次々に投下されていくうちに焦点絞れてきたりするのだろうか。絞れなくても全然いいけど。

で、Voのラケルちゃんにヤクルト・スワローズ青木宣親のユニフォームを着せて、「ゴーゴー・スワローズ!」と言わせたのは誰かって話ですよ。面白いし可愛かったからいいけど、ロッテ・マリーンズの立場がない。


Tame Impala
正味、音源にはいまいちピンと来ないままだったので、The Queens Of The Stone Ageと迷ってたんですよ。だってライブ間違いないじゃないですか。ただ「Tame Impalaのライブはすげえぞ」という噂のみを頼りにこちらを選択。
結果、ぶったまげた。ライブは音楽のみならず様々な演出を含めた総合力で決まるわけですが、そういう総合力勝負でこれ以上のものって、本当に数えるほどしか観たことないというレベルで。
元々楽曲はサイケデリックな感じなわけですが、そこに極彩色の映像が重なり、目も眩むほどの照明が放たれ、その中を幾度も紙吹雪が舞い、微妙な音の変化にも追従してレーザーがぴくぴくと脈打つように照射される。もう完全な、涅槃が見えるレベルのサイケデリアですよ。ハッパ決めてたら飛んでますよ。アルコール決めてるだけなのに飛びそうだったもの。

これらは音と照明の連携の技術やら多色多数のレーザーを一括制御する仕組みやら、最近になってようやく一般化してきたせいで実現できる演出だと思うのですが、少なくとも今までにここまで自在に操っているライブを観たことがない。
今後技術がこなれていくとこういうライブを普通に観られるようになるのだろうか。それはちょっとヤバいと思うのだけど、既にもう操る「センス」が物言う世界になっているのだとすれば、やっぱ彼らのライブはすごいってことです。


ENDRECHERI
KinKi Kids剛くんのソロ・プロジェクト。この名義での音は、彼のその時その時の興味次第で変わっていて、これまでポップではあっても微妙に世の中とアジャストし切れない音を出し続けていて、それに伴って名義の表記も微妙に変わって面倒臭かったりしていたのですが、ここ数年の彼の興味はただただ「ファンク」。
そうなるともうズレは発生のしようがなく、この日は12人編成のバンドを引き連れて、ど真ん中の分厚いのをぶっかます。自分が目立つためにやってるわけじゃないので、最後の方なんかインストの長尺の曲で、各メンバーでソロを回しながらひたすら場を上げていく。これ最高。

今、ああいう大ステージでそれだけの編成を率いてそういう音を出そうと思い、それを実現できるだけの後ろ盾とコネクションがある人間が世の中にどれだけいるのかって話ですよ。
だからもう馬鹿みたいにかっこいい音を全身に浴びながらひたすら「剛くん、そういう興味になってくれてありがとう…、ありがとう…」と思うばかり。本当にありがとう。

ジャニーズさんのネット対応はわかってるんだけど、少なくとも彼のこの音はできる限りフリーで解放した方がその後のゲインは確実に大きいと思うんだけど、でもやらないんですよね。はい。


Chance The Rapper
もう「フィジカル・リリース一切なし」とか「グラミー賞がルールを変えてまで彼に賞を与えた」とかいう情報は嫌と言うほど入ってきていて、そんじゃその「現象」とやらを見物に行きますか、くらいの気持ちで数曲YouTubeでさらっと見ただけで観に行って、ものすごい衝撃を受ける。
おめえそんな名義のくせにそんなに言うほど「Rapper」じゃねえじゃん。時に歌い上げ、時に囁き、確かにベースはヒップホップかもしれんけど、他にもゴスペル、ジャズ、ソウル、ファンク。要するに黒人が育んできた音楽ジャンルをまとめてぶち込んだ集大成のような目くるめく音楽。

誰に一番近いかと考えて出てきたのがD'Angelo。アプローチは異なるから出てくる音も違いますが、でもそのセンスや技術は彼レベルには既になっていると思う。そしてこのペースで他と交わり、リリースを続けていけばもっとすごいミュージシャンに肩を並べるくらいになるのかもしれない。

やっぱアメリカすげえなや、とは思いますが、間もなく日本でもオリコン・チャートがサブスク・配信も含んだ総合チャート化するはずなので、その時「誰これ」みたいのが出てきて、一気にスターになったりすればいいと思う。


で、今回サマソニちょっとまずいんじゃないかと思ったのが動員。
1日目、明らかにこれまでに知っているサマソニの中で一番人が少なかった。フェス飯でテンション上がるほど若くはないので、幕張メッセでのフェスや企画ライブの時は、可能な限りロビーにある常設のレストランで食うことにしています。落ち着いてくつろげるし一番涼しいので。
意外に穴場で結構な確率で座れるのですが、この1日目は13時過ぎの段階で先客3組。ガラガラ。そんなの見たことない。他にもいろんなお店がすごい勢いで呼び込みをしている。そんなの見たことない。メッセ入口のコンビニにすっと入れて並ばず買える。そんなの見たことない。
マリンスタジアムに行ってみたら、右前・左前・右後ろ・左後ろの4つに分けられるエリアのうち、後ろの方には一切人を入れていない。でも前の方も半分も埋まっていない。そんなの見たことない。嘘。これは人によっては昔でもあった。
2日目はだいぶ盛り返しましたが、それでも全盛期の「マリンスタジアム入場制限」みたいな状況は想像もできないレベルの入り。

ただ、ブッキングがどうこうという話でもないと思うのですよ。十分に強力な人連れてきたと思う。思うんだけど、昨年までのEDM上等パリピ全員いらっしゃい状態から舵を切ったこともあり、それが伝わっていないというか。

何度も言いますが、音楽の聴かれ方共有のされ方がひと昔前からずいぶん変わったせいで、元々各人持っている嗜好性の音楽にはより深く触れられるようになった代わりに、嗜好性の外にある音楽に接する機会はほとんど失われています。

そうなると確かに世のフェスの中ではサマソニが一番そういうのに弱いと思います。フジロックほど全くもってブレない基礎が太くあり、場として愛されるわけでもなく、ROCK IN JAPANのように「ほぼ同じ嗜好性の中にあるミュージシャンを総ざらえしてくる」スタイルでもない。
その時々の流れを読んで、様々なジャンルから一番旬な人を連れてくるという方針、自分の嗜好性の中で完結している人たちにはなかなか伝わらなくなってきたのではないかと。

少なくとも「Chance The Rapper呼んできたよ!すげえ!」だけでなく、彼がどうすごいのか、どう観るべきなのかまでをもっと伝わりやすい形できっちりプレゼンするくらいまで踏み込まないとダメなのかなあ、と思うのです。

とりあえず来年も何もなければサマソニ。でもフジがすげえの連れてきたらそっち行っちゃう。2つとも行く予算はありません。